2023年7月。
並外れた降水量の長雨に見舞われた秋田では、浸水や土砂崩れなど、多くの被害がありました。
被害が大きかった秋田市は、下水道や水路から排水しきれない雨水があふれる内水氾濫にるよものだそうですが、線状降水帯がこんなに怖いものだとは知りませんでした。
秋田に移住してから、自然環境がもたらす暮らしへの影響を肌で感じています。
特に雪は、命を脅かす危険ととなりあわせ。大げさに聞こえるかもしれませんが、気を抜いたら死ぬかもしれないという恐怖を抱えながら、外出します。
でも雨も一定量を超えると猛威になるのですね。これからは、夏も気が抜けません。
わが家は(雨漏りがあったくらいで)、大雨による被害はありませんでしたが、ハザードマップを見たら土砂災害警戒区域に指定されていたので、レベル4の発令を受けて避難所に避難しました。
(今回は、その時のことを備忘録を兼ねて綴りたいと思います。)
雨がどんどん強くなった昼過ぎ、とりあえず視察を兼ねて避難所へ向かいました。避難するにしても、何をどう準備すべきか迷ったので、避難所がどんな状況なのか見せてもらおうと思ったのです。
市庁舎に設置されたそこには、消防団員とすでに十数名の避難者がいて、「子連れなので、避難所の様子を見せてもらいたい」と、お願いすると、担当の方が丁寧に説明してくれました。
避難所にあったのは、毛布、緩衝材、わかめごはん、スープ、水(Evian)。
場所は会議室で、床は硬めのモルタルでしたが「ここに毛布を敷いて寝ることになります」と、教えていただきました。隣接する公民館に避難所が設置されれば、畳の部屋もある、とのこと。
話を聞いている数分間で、5歳と6歳の子どもたちはいつもと違う状況にテンションが上がってしまい、周囲を走ったり、避難してきた犬に話しかけたり、とにかく落ち着かない様子。
避難所ではすでに体調が悪そうなご年配の方々が横になり毛布をかけて寝ていたので、ご迷惑になってはいけないと、その場を逃げるように一旦家に帰りました。
避難所に行っても、子どもたちが静かに一晩過ごせるのだろうか…。
強まる雨とともに私の不安は大きくなりましたが、それ以上に心がぐらぐら揺らいだのは、自分が暮らす地域の災害史を全く知らないことに気付いたからでした。
この地域の地盤は大丈夫なのか?
過去にどんな自然災害があったのか?
移住者であるがゆえに、歴史災害の事象や体験談を知らないことが不安を煽り、判断材料すらない自分の無知さに、その時ようやく気付いたのです。
何年頃にどの川が氾濫したとか、過去にここで土砂崩れがあったとか、あの道は危険だとか、災害史とまではいかなくても、昔ばなしとして祖父母が語ってくれるような暮らしに密接した小さな情報が、非常時にはヒントや救いになるのだと痛感しました。
そんなことを考えながら、以下の荷物を持って、夜の7時過ぎに避難所に入りました。
【 避難所に持参したもの 】
・子どものおやつ、水筒、おにぎり
・下着、肌着
・冷房対策の長袖
・洗顔フォーム、眉書き、制汗剤
・水、コップ、歯ブラシ、タオル
・ウェットティッシュ
・サンダル(長靴は履いて)
・ブランケット、バスタオル2枚
・子どもがお気に入りの人形、絵本4冊、自分の本
・アイマスク
・携帯、充電器、イヤホン
・貴重品
・パソコン、子どもの写真が入ったSDカード
・筆記用具、手帳
頼りになったのはホットアイマスク、持参すれば良かったと後悔したのは、耳栓でした。
深夜、避難者のいびきが気になって寝付けなかったのでイヤホンをしましたが、骨伝導イヤホンだったため音を遮断する効果がなく…、ティッシュペーパーを丸めて耳栓代わりに。
避難所の床は硬かったので、配られた銀色の緩衝材を二枚重ねて、その上に持参したブランケットを敷き、毛布を縦長に丸めその上にバスタオルを巻いて枕にし、寝床を作りました。
心配していた子どもたちは、疲れていたのか、あっけなくスコンと寝てくれて、朝までぐっすり。
私は持参した本を一冊完読してしまうほど眠れなかったのに、、、思いのほか頼もしい子どもたちの一面が見られたのは救いでした。
翌朝は、雨も落ち着いていたので、家に帰宅。
ニュース映像を見ると怖くなるので、最低限の情報をネットで収集しながら溜まった洗濯物を洗い、ご飯を仕込み、子どもたちとアイスを食べてのんびり過ごしているうちに、警報も解除され、ほっと胸をなでおろしたのでした。
私が暮らす地域では大きな被害こそなかったものの、避難所では一晩中寝ずに職員の方々が対応してくださり、頭が下がる思いでした。
被災から2週間経ち、わが家は変わらない日常を送ることができていますが、秋田ではまだ復旧が大変な地域もあるようで、そんなニュースや投稿を見るたびに心が痛みます。
一日も早く日常が戻ってきますように、と。
ただ、あの時を思い返し、ひとつだけ心が軽くなることがあります。
それは避難用の荷物を準備していたときのこと。
家が土砂災害に遭った最悪の状況を想定しながら持ち物を準備しましたが、子どものモノや思い出などをどこまで持つべきか、迷いに迷いました。
で、結局、日用品以外で持参したのは、アルバムでも作品でもなく、子どもたちの写真を保存したSDカード1枚だけ。
日頃、髪を振り乱し、ヨレヨレの雑巾のようになりながら子育てをしているけれど、私の子育て人生はSDカード1枚に集約されているのだと思うと、なんだか笑けてきました。
そうか、SDカード1枚か(笑)、と。
子育てをしながら、いつのまにか背負っていた無駄な荷物や心理を、思いがけず下せたようで、肩の荷が下りたような感覚に。
やっぱり命より大切なものはないんだ。命さえあれば、それでいいや、と再確認できたのは、貴重な体験だったと思います。
時間やタスクに追い立てられる忙しない日常では、見えているようで、見えていないものがたくさんあります。
それらに気付かされたこの経験をこれからに活かせるように、まずは地域の災害史をふり返ってみようと思います。夏休み、子どもと一緒に。




